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【あんステ】劇団ドラマティカ act.1 西遊記悠久奇譚 感想文

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――これは始まり続ける物語。

 

※ネタバレ尽くしです。ご注意ください。

 

 

劇団ドラマティカ act.1 西遊記悠久奇譚

を、観た!

 

 

ついに観てしまいました。

宗教上の理由であんステを避け続けていた人生なのですが、今回はそもそも企画の嗜好が異なっていたため、はい、ついに観に行ってしまいました。

やまもといっけ〜に久しぶりに会いたかったのと、まつだがくの顔面がすこぶる好きだったからです。

まつだがく、ほんとうに顔が良くて一時期脳死していたので写真集も持っていて、乱凪砂役に抜擢されていた時は腰抜かしました。だって絶対良いもん。プロポーション最高なの知ってるもん。

色々と要因が重なった結果、禁忌を破って観に行ってまいりました、劇団ドラマティカ。しかも運良く当たった大千秋楽。今から思えば大千秋楽を観劇できたのは本当に、様々な意味で良い体験でありました。

 

 

ではざっくばらんに感想です。

いつもながら1万字近くあるので、人生が暇なひとだけ読んでください。

 

 

 

開始冒頭、悟空と三蔵の初対面シーン。

飛び出す言葉の端々に蔓延る違和感。「前にもこんなことがあったような……」という発言。いつか見た夢のような旅、なるほどね……

これは見事な構成でした。話の大オチについては多分この後散々語るので一旦流しますが、文字通り物語の『はじまり』を担う極めて重要なシーンで織り交ぜられる絶妙な違和感。

こういうの大好き。


あとやまもといっけ〜歌うますぎ

いっけ〜が歌上手いの忘れてて(?)いっけ〜が歌い出すたびにマジでこの人歌上手いな!?とか面白くなっちゃってソロ来るたびに歌上手すぎるだろ……とオペラグラスを持つ手を震わせてましたよ。意味わかんなくて。歌上手いし演技上手いし……

 


オープニングすごく好きでしたね。

何回でも言いますけどやまもといっけ〜ほんとに演技うますぎて氷鷹北斗超えてない!?と不安になる感じね。

私はあにすたの棒読み氷鷹北斗しか見たことないから分からないんですけど、氷鷹北斗があんなに演技上手くなってたらもうそれだけでファンのみなさんは動けなくなりませんか?

あ、あんなに演技がうまいんですか? 俺たちの北斗は?

あんなに演技が上手くなって? 王子様とはまた違う、いや正味あれも王子様枠ではあるのかもしれませんけど、しかしああいった野蛮で粗暴な役柄も、俺たちの氷鷹北斗はキッチリ演じられるってワケですね……感慨深いな……

いやこんな感情抱く舞台、ほかにないですからね。

演技上手いし殺陣上手いし歌上手いし座長として申し分なさすぎて、ずっとドラマティカ出続けてほしい。いっけ〜がいれば安心できる。ほんとに。

 


キャラクターの感じもまた絶妙で。


三蔵、日々樹渉みたいだったけど全然日々樹渉ではなかった。演じ分け、というのが正しいのかは謎ですけれど、あれは日々樹渉が『演じた』『三蔵』なのだという説得力がある。

これは結末を含めた上での感想ですけども、彼はわかりきった物語を決して愛さないでしょう。

彼は筋書き通りに生きる道化ではありますが、それでいて筋書き通りに生きるのを望んでいるわけではないですし。

道化が道化たり得るのは、筋書きを設定する誰かがいるからです。その書き手は神か人間でしかあり得ない。そして『物語』に限って言えば、人間だけが新しいものを生めるわけです。生命の創造と物語の執筆、これは似て非なる行為であって、人間だけが現実の裏側、虚構なりし幻想に思いを馳せられる。

その愚かとも言える行為から生み出される台本をこそ、彼は愛しているわけです。決まりきったシーンを、演目を、何度も同じように繰り返すのが好きなわけじゃあないですよね。

人間が作り出した創作物の昇華、繰り返す演目の中で煌めく、ひとが織りなす営みの輝きをこそ、彼は愛しているわけですから。

(※すいません、五奇人のみんなをそのように定義している人間がこれを書いています)

 

しかしまあ三蔵への解釈はさぞ深かろうと思うわけです。

彼の選択は愚かではありましたが、同時にあまりにも人間らしい。仏に仕える身でありながら我欲に溺れ、終わりを否定し、盲目的に時を繰り返す。人の形を失ってもなお、一筋の愛を求めて彷徨うさまは、きっと日々樹渉にとっても好ましいものでしょう。

同意はできないが、興味深くはある、というか。

あれが日々樹渉ではないという明確な事実がここで効いてきますね。日々樹渉が三蔵を解釈し、日々樹渉をやすいさんが解釈しているわけですから。本当に面白い試みです。

 


オープニングアクト!これはもう最高ですよ。

ここでめちゃくちゃにカッケ〜殺陣がバチバチにキマった瞬間に、この舞台絶対面白く観られるな……と確信しましたよ。

殺陣のある舞台しか見てないですし、通ってきたジャンルの都合上、殺陣ってものが本当に好きで……

次回公演も殺陣ありの御伽噺であってほしい。本当にこの、御伽噺をアレンジする感じ、肌に馴染むしめちゃくちゃ好きなので……いや本気でアーサー王と円卓の騎士やりませんか?

 

 

で、早々にお目当てのまつだがく扮する乱凪砂閣下、が演じる玉龍が登場するわけですが。


ま〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ね。

気が動転した。


いや完成度………完成度高ッ! なに、あれは………すごっ………………写真だけ見ててもなんかこの髪型で舞台に上がれる日本人いるんだって感じでしたけど、なんというか、佇まいから言葉の発し方から振る舞いから、こう、全身で乱凪砂を感じるというか、乱凪砂だったんですよ………乱凪砂は何にでもなれるし何でもできるので舞台上で乱凪砂であっても全然大丈夫です。

特に声色が凄まじく乱凪砂だった。あの優しくて深くて伸び伸びとしながらも荘厳な声色、諏訪部順一じゃなくても出せるんだ……ともかく想定以上に乱凪砂だったのでマ〜びっくりしてここからずっと私のオペラグラスはまつだがくを追いかけていました。最悪ですね。マジで全体像を見る余裕がなかったので買うつもりのなかった円盤を検討する羽目になっています。いつだって人生の歯車は狂いっぱなしです。


登場も最高ですよ。我を失い暴れ回っていたところを討伐されてボロボロになったところで真の姿でご登場、しかも聞く話によれば天界から落とされた龍の王子様だというじゃありませんか。誰ですかこんなに設定を盛ったのは!

閣下が演じる役がこんな、こんな美味しけりゃそりゃコズプロ(主に七種)もゴーサイン出すわな、と謎の納得を得ましたね。

 

罰を受け、罪を背負い、天上への帰還を願う。

いや〜これ、さっきうっかりめちゃくちゃに打ってしまった日々樹渉もとい玄奘三蔵にも言えますけれど、この後に出てくるメインキャラたちみんなにも当てはまりますが、この、ね……!あんさんぶるキャラを絶妙に匂わせるというか、彼らが抱える側面を上手に西遊記のキャラクターへと昇華しているのがね、素晴らしいですね。

乱凪砂は神に至れる可能性を秘めた完璧な人類なのですけど、既に作り上げられた楽園に戻りたいとは願っていないんですよね。既に死した神の忘れ形見とでも言いましょうか、神に愛された子どもたる彼は、新たなる楽園の創造という謳い文句を胸にアイドル活動に勤しんでいるわけでして。還りたいと願う玉龍とは絶妙にズレがある。

きっと閣下ご自身もそういったズレを認識されているのでしょう。閣下もまた物語に愛され、物語に組み込まれがちな人生でありますから、玉龍が抱く感情のすべてを丁寧に読み解いていると思われるわけです。

いや本当にキャラクターがキャラクターを演じているというのは面白いですね。何回も同じこと言いますけどね。こうやってオタクが勝手に付加価値を高めていくわけですから、いっそズルいほどですね。


閑話休題


で、その……玉龍の立ち振る舞いも高貴で美しくて最高でした。佇まいが本当に素敵で……緩やかに胸に手を当てる仕草や、ゆっくりと会釈するあの感じ。最高。誰かの話を聞いてる間の動きが可愛すぎた。ぴょんぴょん跳ねたり、流れていく文字を追いかけたり、階段に座ったり、腕を差し出したり、いやどの仕草も本当に優雅で美しくて王族感凄まじくて最高。『お師匠様』呼びも最高。仲間のこと『〜くん』付けで呼ぶのも高貴で最高。衣装も最高。ありがとうございます。

三蔵の呼び方みんな違ってみんな良すぎて最高でした。呼び名の違い大好きオタク、あれだけで各キャラの関係性が匂わされていて最高になっちゃった。

金角銀角からひとりでお師匠様を守り抜くシーンもめちゃくちゃめちゃくちゃめちゃくちゃ最高で、ここでこんなに殺陣見せてもらって良いんですか!?とオペラグラスが震えに震えて酔いかけました。だってもうそもそも刀を腰に差すビジュアルも良いのに、あの戦闘スタイルの優雅さたるや。敵の胴に刀を突き刺して静かに引き抜く型、あれマジで好きなんですよね……強いけれどどこか影のあるキャラクターがやりがちなあのモーションですよ。あれは敵のモーションなんですよ!最高ですね。殺陣本当に好き。


いや〜ほんとにこれ感慨深くて、冒頭にも書いたんですけど宗教上の理由でステは見たことがなかったんですが、これなら見れるな〜とマジで思いました。

単独で乱凪砂出てきてくれて本当によかった。ありがとうございます。

 


で、問題の悟浄くんですが……

公演後のアンケートに答えていた友人が、印象的なシーンは何ですか?の問いに真っ先に「いやカッパのラップだろ」と答えててめちゃくちゃ笑いました。いやそうなんですよ。あれは何だったの?何をやらせてるの……あの時間異様な空気流れてて怖かったんですけど……

 

悟浄くんのキャラ付けも絶妙でよかったですね。魔術によって人間から妖怪へと変化してしまった、キャラブレの激しい子。カッパなのに泳げないし。逆先夏目を彷彿とさせながらも、悟浄くんには明確な意志があってよかった。情緒不安定なのにコミカルで可愛らしいキャラで良かったですし、後に登場する金角との演じ分けという意味でも素晴らしかったです。

 

夏目くんは割とドラマティカにもノリノリで参加しているっぽい印象なのですが(ストの印象)、大好きな師匠とにいさんと一緒に活動できるなんて楽しくないわけないですよね。今回もノリノリで二役演じていたし、彼にとってもとても良い刺激になっているのかなと思います。

金角やってる時の絶叫が凄まじく好きですね。あの兄弟、すごくよかったな……夏目くんがお兄さんを演じて宗くんが弟なのもめちゃくちゃ良かったし……なんだったんだ……

 


そして満を辞して登場した八戒さん。

あまりにやまざきくんの斎宮宗ムーブがすごいので、一瞬斎宮宗かと思ったんですけど、彼もまた斎宮宗ではなかったのがよかったですね。だって斎宮宗は絶対に他人任せにしませんもんね。他人任せにしないがために他人に迷惑をかけるタイプの男ですもんね。そこが良いんですけどね。

彼の『師匠くん』呼び良すぎて良かった。日々樹渉演じる三蔵に唯一この角度からコメントできるのが斎宮宗演じる八戒くんなの、めちゃくちゃによかったです。

 

悟空を破門した後、八戒くんが三蔵に説教するシーン、あれは良かったですね。あれ、八戒くんにしか言えない台詞でした。八戒くんもまた明確な目的を持ちながら、仲間を大切に想っているのがわかる良いシーンでしたね。

 

ていうか突然斎宮宗を演じるやまざきくんを観たのも初めてだったのですが、あまりに斎宮宗すぎて、斎宮宗を演じる人ってみんなこんななの!?という気持ちになりました。あまりにも斎宮宗すぎて……噂には聞いていましたが凄まじいほどの斎宮宗。

 

カテコ挨拶の斎宮宗大好きすぎて……

お客様ありきの芸術、お客様があって初めて芸術は完成する。

いやこれこれこれ。斎宮宗が手がける芸術は決して孤独では成り立たないんですよ。共にステージに立つ仲間、共にステージを作り上げるスタッフ、そしてそれらを観測する客人が居て初めて、彼の芸術は完成する。

彼の芸術は人間讃歌であり、人間の営みとは他者との触れ合いによって生まれる。人間が生み出す芸術によって神の域へと至る、それが斎宮宗の芸術論です。彼にとって神がどうこうというのは実の所あまり関係がなくて、というのと彼にとって大切なのはその域へと至るまでの過程なわけです。

彼が仲間と共に作り上げる劇団という芸術の一端を担えたことを、誇りに思います。

 


……これ書いてて思ったんですけど、今回の各キャラクターは皆が明確な意志を持っている、というのが物語上かなり重要なポイントですよね。

悟空にとっては意志なるものを探す旅であり、ほかの三人にとっては意志を完遂するための旅であり、三蔵にとっては意志を終わらせるための旅であり。

意志あるところに道はできる。

されど潰えぬ道は無く、交わった先に待つ、確かな終わりを目指す旅。

劇団ドラマティカというシリーズの始まりとして、これほど相応しいテーマもありませんね。

 


まとめかけてしまったが時系列に戻ります。

 


第一部については先に触れてきたとおり、各キャラクターの性質や各々の交わりが描かれました。

異なる目的を持つ五人が同じ場所を目指して旅をする。

長い旅の中で育まれる愛と希望、それをありありと見せつけられる時間だったのだと、今となっては思います。

実際第一部が終わった時に、かなりの満足感を得ていたんですよね。あー良いものみたなぁ、みたいな。まあそれで終わらなかったのが西遊記悠久奇譚なのですが……

 


日替わりお遊びコーナー、大千秋楽は玉龍による持ち込み企画でした。めちゃくちゃ可愛かった。謎のキャッチボール……キャッチボール?ボールリレー?

お師匠聞いてませんよ!?のくだりめちゃくちゃ笑いました。悟空だけめちゃくちゃ不利だし。でもみんな楽しそうで本当によかった。舞台でよくあるああいうの久しぶりに浴びました。

 

で、休憩明けて第二部ですが。


いやもう第二部ずっと慌ててたしずっとキレてたし蓮巳敬人に。あれ蓮巳敬人が台本切ったんですか!?

何であんな………………平成のオタクなんですか?めちゃくちゃ平成でしたよね、もうなんか……最悪なの自覚しながら言えばもうあんなのC○AMPやんみたいな。

いや正直今回の西遊記悠久奇譚の大オチめちゃくちゃ好きで、しかもかなり肌に馴染んだ感覚があり、終演後からずっと何だこの実家のような安心感もといゾワゾワする感じは……と思っててんですけどこれCLA○Pで50億回見た。

いや私CLAM○めちゃくちゃ好きで!?!!?!?!!?絶対蓮巳敬人もCL○MP好きじゃないですか。絶対好きだよ。好きじゃなきゃこんな台本切るわけない。


いや蓮巳敬人が書いたわけじゃないんですけど!?!!?!?!!?蓮巳敬人も絶対好きな話だと思うのでとりあえず蓮巳敬人が台本書いた体でこの先は進んでいきますね!?!!?

 


いや、いや……ハイ………あの、まず人を殺してはいけないという戒律を破った悟空を破門し、破門された悟空が『自由とは何か』という難しすぎる命題に頭を使い、自分なりの答えを出すというくだりがですね。もう良かったんですよね。

第一部で描かれた仲間との絆、その最頂点をあそこで見せつけられるわけです。

 


悟空にとって仲間との旅はかけがえのないものになった。それを三蔵は『』だと称しました。

なるほどそれは三蔵本人にも当てはまるわけです。彼はとてつもなく賢いのでしょうから、彼自身が至ってしまった負の輪廻、その要因についてもただしく理解していたのでしょう。理解していたからといって止まれるわけではない、それが人間という生き物の抱える矛盾でありますが。三蔵、めちゃくちゃ人間でよかったな……


三蔵は賢いひとです。

仲間との絆や旅の思い出、彼らと育んできた愛そのものは、もはや自らの魂を縛る『鎖』でしかないことを、明確に、強烈に、自覚していたのではないでしょうか。

だから悟空にとっても同じように旅そのものがかけがえのないものになった時、彼は薄ら笑ったのでしょう。もしかしたらあの時点で此度の結末を予見していたのかもしれませんが、ともかく。

何も差異があるわけではないのでしょう。玄奘三蔵の愛と悟空の愛、それから仲間たちの愛だって、実のところ大差ないはずなのです。愛に強さも大きさもないのです。それをどう扱うかは、当人たちによりますが。


三蔵にとって弟子たちへの愛はもはや『鎖』でしかなくなってしまった。

しかし悟空にとっては、皆への愛、お師匠への愛は、生きる目的に据えても構わないほどに、活力に満ちたものであったに違いないのです。

 


そして迎える最終局面。

すいません本当にここはもうなんかこんな都合の良い展開があっていいのか?と思えるほどに玉龍が最高でした。

玉龍という存在を牛魔王というラスボスに上書きするとかいうトンデモ展開、先に金角銀角のダブルロールを見せられてからの、『物語の文脈そのもの』をツール化するという、端的に言えばメタ展開

そんなんオタク大好きなんですよ〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!ていうかラスボスの閣下があまりにも あまりにも あまりにも都合が良すぎてゆ、ゆめ………!?みたいな気持ちになりましたし牛魔王衣装の閣下およびまつだがくめちゃくちゃ良くて狂った。狂ってません………いや本当によかった。

牛魔王に『させられる』、物語の筋書きを『書き手』によって『当てはめられる』という屈辱を、初演で乱凪砂にぶつけますか!?

乱凪砂の人生には常に物語が横たわっていて、いつだって誰かが書き記した文脈の上で生きているんです。それを自覚しながらもなお、万能たる己を上手に使いこなしながら、それでも輝かしい未来なるものを信じてやまない子どものように無垢なひとなんですよ。

そんな乱凪砂に牛魔王やらせること、あります!?!!?!?!!?絶対平成のオタクだよ蓮巳敬人は。

 

牛魔王にさせられてからの殺陣はかなり大振りで、叫び声も激しく、まあ本当に心臓がドキドキしてしまって、いや物語の展開も大変なことになっているうえに目の前で乱凪砂があまりにも都合の良い使われ方をしているしで大混乱ですよ。

 

玉龍の時もそうでしたけど火を吹くモーション?が投げキッスしてるようにしか見えなくて序盤からめちゃくちゃめちゃくちゃドキドキしてて終演直後に同行者に「乱凪砂がめちゃくちゃ投げキッスしてきて本当に困った」て大興奮のまま言ったら「いや投げキッスしてねえんだわ……」と極めて冷静に怒られるくらいにはあの投げキッスが………最終局面の激しい戦闘シーンめちゃくちゃよくて最高でした。

 


で、ね。

はい……結末に、近づいていくわけですけれど……


まず恩人がラスボスという展開、道化じみた男に覗く狂気、分かり合えない平行議論、悪どいにも程のある凶行の根拠にある、確かな愛


だからこれCLAM○なんですよ。マジで!!!!!全く関係のない作家を並べしまって本当に申し訳ないんですけどこれはもうめちゃくちゃ手に馴染んでるんですよ。

 


愛がね、あるんです。

終わらない旅を続ける彼は愚かでしたし、哀れでしたし、何より孤独でした。圧倒的な孤独。一人だけ持ち越されるループの中で、彼は何物にも変え難い大切なものを確かに見つけてしまった。

終わらせたくない、失いたくないというたった一つの願いが、無数の弟子の命を奪っているなど、何という皮肉でしょう。

 


そんな三蔵の苦しみを、悟空という男は、否定も肯定もしなかった

ただ、お師匠と俺は違うとだけ、彼は言うんですよね。

輪廻にしがみつく行為そのものを間違っていると告げながらもなお、悟空はお師匠という愛する存在そのものを否定できやしないわけです。


だって悟空の生きる意味、持つべき意志は、三蔵との出会いから始まったのです。


お師匠との出会いに感謝しているから、お師匠のことを愛しているから、前に進むことを諦めたお師匠を許すわけにはいかないのです。

 


この圧倒的な、暴力的なまでの光

この二人の関係性をそのまま氷鷹北斗と日々樹渉に落とし込んだらもう負け決定なので我慢してるのですが、少なくとも氷鷹北斗はマジでこういうところあるよな……と深く頷いてしまいました。氷鷹北斗は光の男なので……


実は氷鷹北斗と日々樹渉の関係性がかなり好きで、それもあって今回はマジで観て良かったと思ってます。立派すぎる新規ストでしたよこんなの、ありがとうな……


ズ!メインスト第二部のSS決勝編がほ〜んとに私は大好きで、あのとき氷鷹北斗のそばに日々樹渉がいてくれたのが嬉しくて仕方ないんですよ。

氷鷹北斗の革命は日々樹渉の概念死から始まるので、仮面を与えた日々樹渉に仮面を返すあのストーリーが、私は本当に好きで…………………


何がすごいって、氷鷹北斗は凄まじい胆力の持ち主なので、日々樹渉に物怖じしないんですよね。耐久性に優れすぎていて心の動きが鈍いので、日々樹渉が何しようと全然変わらないんですよね。その辺がつまらなかったり面白かったりするんでしょうが……

多分この先もずっと日々樹渉となんでもない話ができるんですよね。彼らは良き隣人であるというのが私の持論で、ずっと一緒にいるわけではないけれど、ふとした時になんでもない話ができる。

彼らにはずっと良き隣人でいてほしいです。

 


で、これを踏まえた上で今回の脚本を立てた人は日々樹渉にはこれくらい暴力的な光の男、つまり氷鷹北斗をぶつけねーとな!みたいな凄まじい信条を感じ取ったんですけどどうしたんですか!?

ズ!!SSサンクチュアリで日々樹渉を取り巻く環境は再びの激戦区と化しているのに、まさかこんな角度から新たな第三勢力を巻き起こそうとするなんて思いもしませんでしたよ。ビックリしました。

たしかに蓮巳敬人は暴力的な光の男が好きでしょうよ。これは確信できます。別に私は蓮巳敬人のオタクでも何でもないので本職の方に申し訳が立たないんですけど、多分趣味は似てるからわかる。蓮巳はああいう男、多分好き。

 


そして物語は再びはじまりに戻る。

何度でもはじまり続ける物語、まさかその言葉通りだとはね……

何度でも繰り返し、繰り返し、繰り返し、けれどいつかは終わるかもしれない。

誰かの諦めと、誰かの意志が交わった時、きっとこの旅は終わりを告げる。

はじまった物語は終わらなければならない。幕を下ろす瞬間だって、きっと日々樹渉は愛している。

彼が愛する舞台演劇というものに触れられた気がして、とても嬉しく思います。

 


いやしかし結末を見て思ったのはこれ悟空が止めるべきは三蔵じゃなくて、この惨劇を遥か高みから見下ろし続けている釈迦なんじゃね〜の!?と思いましたよね。

(あんすた世界を踏まえてあえて神と称しますが)この……この手の神はダメですよ。いやね、神という機能であって、そこに人格はおそらくないんですよこの場合。神はいつだって機能的です。あれは人間ではないので。人間であれば人格がありますけど、神は単なる機構であり自然ですから。

とはいえですよ。この……まさに『そこにあるだけ』の概念たる神をブチ殴りたいとの怒りに沸くのは致し方なくないですか!?絶対経典持ち帰って釈迦のことぶん殴って欲しいんですけど……

なんかあんすた世界の神のこともフラッシュバックして、じわじわと釈迦への怒りが沸き立っていて嫌なんですが……

 


とはいえ本当に、あらゆる意味で、劇団ドラマティカという特殊な企画のオープニングに相応しい作品だったと思います。

想像以上に楽しめて自分でも困惑しています。私は舞台観劇でこんなに楽しめるんだ……!

 


さっそく次回公演の予告も発表されましたね。

今度はどんな物語を魅せてくれるのかとても楽しみです。

大変な時期が続きますが、まずは26公演すべて無事に終えられたことを嬉しく思います。

また劇団ドラマティカの世界を浴びられる日を楽しみにしています。